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72) シャンプー [自伝本『私のこと』]

入社してすぐは、掃除から始まり、スタッフ全員のお昼ご飯の買い物、
髪の毛の床掃き、使用済みロット洗い・・・などの仕事がメインとなるが
SHIMA では これらもスマートにやらなければいけない。
姿勢はもちろんのこと、機敏に、正確に、やりこなさなければ注意される。
 
大袈裟(おおげさ)に聞こえると思うが、最も大切な事だ。
 
床掃きが きちんと出来ない人は、カットの技術の向上はない。
床掃きに対する気を使う項目が 仮に5つとするならば
お客様にカットする技術者は、常に100位の項目分 脳を使わなければいけないのだから。
 
そのことを SHIMA では 最初から 明確に教えてくれる。
 
約2ヶ月位経った頃、いよいよ シャンプーのレッスンが始まった。
美容師の基本だ。
今では、自動シャンプーマシーンを利用している美容室も少なくないが
シャンプーには 美容師にとって 大切な要素がいっぱいある。
 
“かゆいところに手が届く” というサービス業の神髄である。
 
リズム、強弱、シャワーのかけ方、細かいところへの気配り・・・。
いろんな要素が合体して、はじめて 気持ちの良いシャンプーとなる。
 
私は シャンプーが得意だった。
洗っている先輩の頭を、まるで 自分の頭のような感覚でとらえていた。
気持ちいいところ、イヤだなぁ〜と思うこと、明快にわかっていた。
 
一番最初に合格した。
 
それ以来、私の仕事は激増した。
 
遅れて 同期の合格により
シャンプーという仕事を我々の期で完全に引き継ぐ頃には
私への “指名シャンプー” が増えはじめていた。
 
指名シャンプーとは、お客様から シャンプーする人の指名を頂くことで
一度担当した方から
「気持ち良かったから 次回から あなたにやってもらいたいわ」 と直接言われたり
ある時は、技術者からお願いされることもある。
 
当時、7名の同期がいたが
ある日、シャンプー待ちのお客様のカルテが7枚並んだ時のこと
誰もシャンプーに入ろうとしないので
私がシャンプーしながら合図をすると
全部 私への指名シャンプーのお客様だったことがあった。
 
シャンプー台での仕事は、最初のシャンプーだけでなく
パーマ後のリンスや、カットリンスなど、髪を洗い流す行為はたくさんあるのだが
指名シャンプーのお蔭で、仕事量もさることながら
一人一人 お客様との会話を記憶したり、好みを覚えたりと
私の脳のシナプスは、途切れることはなかった。
 
指名シャンプーを希望されたお客様の多くは
当時の店長が担当されるお客様だった。
その後、カットも私を指名してくださり
永いお付き合いとなったお客様は 大勢いる。
 
今でも 来店される方の中で
「あのシャンプーは忘れられないわ」 と言ってくださる方もいて
昔の話に盛り上がったりするのだ。
 
今では、私が直接シャンプーをすることはなくなったが
自宅で子供達のシャンプーをする時、ただ毎日洗っている行為も
気持ち良く洗ってあげたら
この子たちも 良し悪しのわかる人になるかなぁ〜と考えながら
やってあげているのである。
 
 
 

2009年08月04日(火)

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