年表

76) 昼食代 [自伝本『私のこと』]

仕事中は、あまりゆっくり昼食を食べられない職種である。
 
給料の少ないアシスタントやインターン生は、内容においても
あまり有意義なものとは言えない。
 
昼食のチョイスとしては さまざまで、あらかじめ用意してくる人もいれば
近くのお弁当屋さんやパン屋さんで買うこともできるし
注文制の仕出し屋さんの日替わり弁当ということもある。
 
私達 インターン生は、もっぱら近くの 『ほか弁』 で
のり弁やシャケ弁を買う。
当時の値段で、 ¥ 170 くらいだったと記憶している。
唐揚げ弁当やハンバーグ弁当を食べているスタイリストを横目に
いつか 値段を見ずに 物を買えるくらいまでになりたいと思っていた。
 
だが、ある男性トップスタイリストの一人が、いつも 昼食に
仕出し屋さんの一番安いランクのお弁当をたのんでいた。
¥ 280 , ¥ 330 , ¥ 400 , ¥ 500 と 4ランクになっており
一品づつ おかずが増えていくのである。
 
ある時、不思議に思い、思いきって聞いてみた。
すると、 「これで十分おなか一杯になるし、無駄なものにお金を使わない・・・
お金貯めたいから・・・」
彼は 独立を考えていると言う。
 
男性美容師が増えてから、美容業界は華やかな印象を持たれていたが
昼食代などと些細なことではあるが
堅実な努力を見て、考えさせられたのだ。
 
中には、彼を 「ケチくさい・・・」 と 悪く言うスタイリストもいた。
確かに、生活感は その人の雰囲気を勝手に作り上げてしまう・・・。
美容師としてのイメージも大切だ。
 
要は “使い方” である。
 
お金は、必要なことには ケチをせず 使い
不必要なものには 無駄金を 使わない。
 
これが、わかっていながら 実は 難しいことである。
なぜなら、後になって あれは無駄遣いだったと知るからだ。
 
人間とは、欲に対しては 案外 弱いものである。
 
 
 

2009年08月25日(火)

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