年表

118) コンセプト [自伝本『私のこと』]

箱が決まっていく間、中身であるスタッフも 徐々に私の前に現れてきた。
 
SHIMA を辞める時には 全く当ても無かったが
大規模なお店でもないから・・・と、割とのんびりしていた私だった。
SHIMA 時代にも、他の美容師さんが お客様として来店してくれていて
私が退社して独立することを聞き付け、連絡を取ってきた。
 
スタッフについて、一つ決めていたことがある。
それは 面接をしないこと。
要するに、私と一緒に働きたい・・・と言ってくれた順に
決めていこう、と思ったのだ。
自分に自信がなかったわけでもないが
SHIMA という看板なしで、私個人についてきてくれる人を
先ずは 信じてみよう、ということだ。
たまたま 美容経験者が 3人、連絡を取ってきた。
まだ 現実にお店が決まっていなかったので、約束は出来なかったが
会って、これからの予定や理想などを話し合った。
 
それ以来、未だに 入社のための面接は していない。
面接というより、入りたかったら 何度でも足を運んでもっらって
私だけでなく、スタッフ全員とコミュニケーションをとり
いわば 相思相愛になれるかどうか、判断して欲しいのだ。
小さいお店だからこそ、オーナーだけで決めるのではなく
スタッフ全員の意見も必要だと思ったし
一回や二回の一時の面接なんかでは、わからない人間性もある。
実際、オープンしてから 初めて入社希望のスタッフの例では
毎日 見学に来ていて、終いには 夜のミーティングまで参加し
スタッフ以上のコミュニケーションをとった末に、お互い相思相愛で入社した。
こちら側からの目線だけでなく、希望する個人も
一目見て 気に入ったものの、入社してイヤになることも少なくない。
今でも、こちらのことをしっかり見定めてから 決めるように伝え
こちらも 包み隠さず 時間をかけて 見てもらうようにしている。
こんなやり方は、決して正当とは言えないが
人間の出会いは いつも 運命的なものだと、なんとなく思うのである。
そして、案外 出来の悪い人も(あっ、失礼・・・) 性格が良ければ
育てていく自信があるような気がするのである。
 
そんなスタッフ達であるから、まず 信用、そして 自主性を最も重要にしている。
Balance に 決めごとは ほとんど無い。
掃除の担当場所などの細かいことから
仕事の分担や出勤時間に至るまで、できるだけ “きまり” をつくらない。
そして 常に 「公私混同せよ」 と言っている。
一般的には 「混同するな ! 」 である。
私は 美容師を一生続けるライフワークだと思っているし
小規模サロンでは、家族以上に付き合いも深い。
お互いプライベートを知ることも、未来の人生設計には必要なことだから。
 
独立する前に、時々思っていたことがある。
例えば、友人の結婚式に出席したくても 土日に休めないこの仕事。
しかし、私は 「出た方がいい。」 と言う。
もちろん お客様のことは大切だ。
でも、一度しかない親友の結婚式に出席できないことは 大人として嫌なのだ。
あるいは、遅刻に関しても 何時までに来ないと罰則、ということもない。
よく、ドラマや映画のワンシーンで
恋人が病気になり、そんな時に限って 大事な商談や会議があったりする・・・。
そんなドラマチックなことが、現実に起こることもあるかもしれない。
おばあさんに道を聞かれたら、ちょっと遅れてでも 連れて行ってあげたりする・・・。
そんな 人間性の方を豊かにしていきたい。
ただし、常識の範囲内の話であり、お客様を待たせることは NG である。
こんな風に 大袈裟にイメージしているが、スタッフは いつも早く来てくれている (笑)。
要は、決まり事がなくても社会人としての判断をして欲しい。
“小林純子のお店” ではなく、“自分達のお店” として、自分で考えて欲しい。
決まり事なんて、どんどん変えていっていいのである。
何の疑問もなく、与えられたことだけをやっているのでは
自分の欲しい未来には なかなか行けないものだと思うから。
 
私を含め、これから先も 話し合ってどんどん変えていく・・・。
人生 何があるか、どう変わるのか、そこが一番楽しいところだからである。
 
 
 

2010年01月29日(金)

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