年表

42) 着物 [自伝本『私のこと』]

着物は 母の香りでもある。
 
美容師という仕事柄、着付も貸衣裳も やっていた。
家には (正確には お店だが・・・) 何十着もの 着物があった。
 
幼い頃から よく 母の仕事を見ていた私だが
一番楽しみにしていたことは、結婚式の花嫁衣裳・・・。

“白無垢(しろむく)” だ。
 
まさに 白い着物を、肌着から数えて 何枚も何枚も
白で重ねていく。
帯も、胸元に入れる小物も、草履も・・・ 全部全部 真っ白だ。
 
幼い私だったが、この美しさを見るのが
そして、母の仕事ぶりを見るのが、大好きだった。
 
自分の結婚式も、断然 “白無垢” と 決めていた。
しかも
≪絶対 母に着せてもらおう・・・ ≫
それが 私の夢の一つだった。
 
改まった その凛とした香りに包まれながら
≪私が結婚する その日まで 絶対 死なないで、お母さん! ≫
と、心の中で 強く願う 私だったのである。
 
 
 
 

2009年04月17日(金)

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