年表

129) はじめまして ! [自伝本『私のこと』]

子供を産むということは、壮絶な一生の記憶である。
 
第一子は勿論のこと、第二子も第三子も、記憶から外れることはないだろう。
 
生まれたての赤ちゃんは、意外にも手足は細く くしゃっとした感じである。
産んだ分娩台の上で、初めての抱っこを経験する。
 
≪この子が私の子かぁ〜・・・≫
 
初めてではない感じの 「はじめまして ! 」 である。
 
≪こんな大きな物体が、私の中から出てきたのかぁ〜・・・≫
 
正直、よく産めるものだなぁ〜が感想である。
 
人間というのは、欲深い生き物で
赤ちゃんができたと聞いた時は、
産まれるまで ちゃんと大きくなりますように・・・と願い、
生まれる頃は、五体満足でありますように・・・。
そして、正常だとわかると 可愛いかなぁ〜を気にするのだ。
たぶん その次は、頭がいいとか 運動神経が・・・と
どんどん欲が増えていくのであろう。
 
親にとっては、欲というより 願いと言った方が正しいかもしれないが。
しかし、何かある度に 健康であれば・・・と基本にもどるのである。
 
生まれたばかりの子供の寝顔を見ながら、私は想像した。
 
≪この子のために 死ねるのだろうか ? ≫
 
世間では、我が子のためなら自分の命さえ差し出すことが出来る・・・と
よく言うけれど、じっと見つめながら考えた。
 
正直に言うと、まだ無理であった。
きっと、この先 病気をしたり怪我をした時に
神様に 「どうか この子を助けてください・・・」 などと
お祈りしていくうちに、いつか この子のためなら死ねる ! と
本気で思えるようになるのであろう。
 
そんなことを考えながら、『坑Dヒト免疫グロブリン注射』 を
接種してもらっている私であった。
この注射は、母親である私の血液型が Rh− で、子供が Rh+ の場合
母体に抗体を作らせないための高価な薬であり
分娩後72時間以内に接種しないと、第二子に影響を及ぼすのである。
 
≪この子のためなら・・・≫ の答えが出ないまま
次の子のために 打つ注射・・・。
しかも、産んでいる真っ最中にも 痛みに耐えながら
もう一人産む気があるかなど
考えていた私であった・・・。
 
 
 

2010年03月09日(火)

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